時代箪笥を次の世代に

古いものの魅力



  •  は常日頃箪笥をご覧になられるため
    私どもの店頭に足を運んでくださる方には、時代箪笥に限らず骨董品全般に通じる
    商品の魅力についていつもお話させていただいております。
     
     
     古いものは、そのものがこの世に生まれてから
    現在までの時間の経過に思いをはせることができ、そのことが
    一番の骨董の魅力だと思っております。
     
     
     テレビの大河ドラマや映画などで見る戦国時代や江戸期の日本は
    現代の私たちの生活や文化からは大変縁遠く、生活も文化もまったく現実とはかけ離れた世界で、
    私たちの身近なものとしてリアルに捉えにくいものです。
     
     
     たとえば江戸期の焼き物は
    ある意味私たちと大河ドラマの世界をオーバーラップさせてくれるもので
    素朴な古伊万里を眺めておりますと、自分からははるか遠い存在であった江戸期が、
    意外と身近な存在へと変わって感じられるものです。
     
     
     その遥かなときの流れを感じとることこそが
    古いものの魅力のなかの、大きな構成比を占める要素であると考えています。
     
     
     明治、大正、昭和期の箪笥やアンティーク家具は
    陶磁器ほど歴史こそありませんが
    それゆえに上記「懐古趣味」の面から見ましも同様で
    さらに子供の頃の実体験に基ずく記憶に残っているケースなども多く
    さらにリアルに時の流れを感じとることができます。
     
     
     私がよく使うコメントに
    「昔田舎のおばあちゃんちにあった箪笥に似てません?」
    ・・・まさにそのとおりの記憶の方も多いのではないでしょうか。
     
     
     古い家具は家族の歴史
    その家具が苦しいときも嬉しいときも
    同居の家族に立ちあってきたことで
     
     
     その「味」が木肌に染み付きいるからこそ
    傷ひとつない今の家具にはない
    深い人のぬくもりの伝わる魅力を持っているのではないかと考えています。
     
     
     先人が腕によりをかけて手作業で製作し
    大切に使われてきた古い箪笥や家具ははるかな時代を超えて私達に
    昔の話をやさしく語り掛けてくれているようにも思えますよね。

時代箪笥を日本に残そう

  • 江戸から明治に掛けての文明開化や戦後の高度成長期。
    そんなめまぐるしい変遷の時代を経て、
    現代の日本人の生活は格段に豊かになり
    欧米文化をどんどん取り入れることによって、
    日本古来の文化が跡形もないほど様変りしてきました。
     
    大量消費の結果大量の廃棄物が発生し
    昨今は地球規模での環境問題や温暖化がクローズアップされ
    ご存知のようにゴミの問題も規制が大変厳しい状況になってきました。
     
    勿論先人が腕によりをかけて手作業で作成した
    古い箪笥や家具も例外ではなく
    状態の悪いものは廃棄され焼却され再生処理されていきます・・・
     
    大量生産、大量消費の中で、
    現代の日本人は、たくさんの先人が大切にしてきたものを見落とし、
    気軽に失っているのではないでしょうか…?。
     
    箪笥たちが100年もの年月を経て、
    古へ人に大切に使われてきて
    今も補修可能ないい状態で残っているのに、
    素晴らしいその価値に気付いている日本人が
    ほとんどいないのではないでしょうか。
     
    外国の方のほうが日本のその工芸的価値を認めているため
    外国に持ち出せば高く評価される日本の和箪笥を
    海外のバイヤーが大量に買い込んで
    欧米に大量に送られているのが実情です。
     
    年中海外のバイヤーが大勢日本を訪れ、
    日々コンテナを海外へ送り出しているのです。
     
    輸出専門の業者さんの話では
    全国で百人の外国人バイヤーが年に一回ずつ来ても、
    百台のコンテナが出て行くとのことで、
    そこに例えば40フィートで60本くらいの箪笥が入るとすれば、
    一年に約6000本が海外へ流出するということになります。
     
    そのような業者は海外に大掛かりなリペアのための工房をもち
    外国の方が日本の文化的工芸品として
    高く評価し購入されるそうです。
     
    反面、国内向けに箪笥のリペアを手がける業者さんは
    これからまた何十年も持つように、
    大切にしてもらえるように毎日修理し続けても、
    日本に残っていくものはほんの一部で
     
    日本人の時代箪笥に対する評価が外国の方より低く
    大きなものを扱うわりに需要が少なく
    実際箪笥を手がける業者自体
    減少傾向にあるとおっしゃっておられます。
     
    だれしも小さな「商材」で商いしたほうが
    労力もコストも場所も要らずメリットがありますよね。
     
    ひいては日本人自身が日本の古い文化を見捨てる結果となり
    箪笥を国内向けに修理する業者が存在しなくなれば
    箪笥は捨てられるか外国に出て行くのみということになりかねません。
     
    日本の素材を使い日本の匠で生きてきた箪笥ということで、
    できれば日本人の私たちは日本に残していきたいと思うのが人情です。
     
    時代箪笥市場の買い付け状況を見ていますと、
    外国人のバイヤーが買い込まれている以外
    国内の業者さんが仕入れられても
    結局国内向けに販売できないうちに外国の方に転売されていくものも多く
    実態と致しましては
    実に国内で出てきた時代箪笥の90%以上が
    日々海外へ流出しているのが実情だと聞きました。
     
    環境も人間関係も一段と厳しさを増す現代社会では
    リフレッシュできる環境も以前にまして不可欠となり
    より"癒し"を求める方向に向かいつつあります。
     
    心から寛げる空間として自分なりの生活空間を構築され
    和の時代家具を生活に取り入れることで
    海外からも高く評価され減少する一方の日本の匠が生んだ工芸品を
    次の若い世代に数多く残していけることを望んでいます。
     
    無機的な大量生産の家具も傷ひとつなく美しいものですが
    小傷や欠点があっても手作りの温かみのあるインテリアとして
    日本人の皆さんに和箪笥が見直されることを願っています。